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2007.12.06

出版社の営業マン

昨夜、12/5放映のテレビドラマ「働きマン」第9話、泣きましたねぇ。
主人公・松方が勤める大手出版社、豪胆社の営業マン・千葉の話でした。
原作を読んでいたので、この話がドラマになるのを待っていました。

世間一般には「出版社=編集者」というイメージが強いのですが、出版社もモノを作る製造メーカーですから、購買担当者もいれば営業マンもいます。

長い間プータローをしていた時、叔父がずいぶん心配してくれていました。出版社に就職したと報告したとき、「おお、出版社か、すごいな。で、お前はどんな本を作ってるんだ?」「いえ、出版社の営業なんです」「……なんだ、営業か。営業なら他にいくらでも会社あるだろ?」と言われました。

本屋さんやコンビニに並んでいる出版物のほとんどが委託販売です。書店は一定期間の間なら、送られてきた本を返品することができるのです。書籍の返品率は40%を超えています。返品率40%の製造業って、考えられないですよね。それくらい効率の悪い業界なのです。

だから、ドラマの中で、書籍部が過去のデータを分析して「初版20,000部」と慎重な数字を出したのは、とてもよくわかります。
ちなみに、初版20,000部って、十分大きい数字ですから。「20,000部も刷ってもらって文句言うな!」と菅野美穂に突っ込んだ著者や編集者は多いことでしょう。
出版業界にPOSシステムが導入されたのは、ほんの10年ほど前のこと。市中在庫をある程度正確に把握できるようになったのは、5、6年前からでしょう。返品リスクを考えて生産を抑えていくのは正論です。

しかし、データは所詮過去のものでしかありません。過去のデータによって未来を予測することはできますが、それはあくまでも予測にすぎません。予測不能の事態が起きるのが出版の面白いところであって、醍醐味であるはずです。
データの予測をぶち壊し、嬉しい誤算を生み出すためには、やはり「思い」が必要です。著者・編集者をはじめとする作り手の思い、営業・取次(問屋さん)・書店の売り手の思い。それが読者に伝わったときにブレークスルーは起きるのです。もちろんいつも当たるわけではありません。むしろはずれのほうが多いです。しかし、一度味わうとやめられなくなる快感です。

かつて、著者と編集者の思いに動かされ、ゲラにもなっていない手書きの原稿を読んで「面白い!」と思ったことがありました。「こんな本、いままでになかった。売れるんじゃないか?」「よし、売る!」と思いました。
しかし、ゲラを持って営業にまわったところ、取次でも書店でも、さらには社内でも、反応は見事に二つに分かれました。「これは面白い!」という人と、「こんなの、絶対売れない!」という人と。
しかし、僕は逆に「これはやっぱり売れる! それもかなり売れる」と思いました。人は経験則で考えがちです。半分の人が「売れない」と言い切るということは、それだけ画期的な商品なのだ、と思ったからです。しかも、半分の人が「売れる!」と言ってくれているのです。

結果としてその本は大ベストセラーになったのですが、そんなまったく新しいものが売れるかどうかなんて、誰にもわからないのです。データも参考にならない。信じるしかないのです。

しかし、このドラマを見て、「初版5,000部? 働きマンみたいに思い入れを持って、40,000部にしてよ!」と出版社の営業部門に乗り込む著者が出てくるかもしれませんね。
大変だ。
おつかれさまです。

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コメント

ドラマは見逃しましたが、コミックは泣けました。
電車の中で読んでたので困りました。
このお話のような快感、
まだ味わったことがないですが、
一度味わってみたいです。
そのためにこの仕事を続けてるんだと思います。

投稿: とおりすがりの編集者 | 2007.12.06 13:50

とおりすがりの編集者さん、コメントありがとうございます。
来週の水曜日の昼間に再放送がありますよ。
下手な会議やるより、みんなでこのドラマ見たほうが盛り上がるんじゃないですかね?

仕事してたらいいことも、悪いことも、両方味わいますね。
仕事やめたときに、ちょっとだけいいことのほうが多ければ、それが最高なんじゃないでしょうか。

投稿: まろ | 2007.12.06 17:46

菅野美穂が「20,000部」って言った時、「多いじゃん!」
って思ったんですがそんな事なかったんですね。

うちの雑誌は書店に置いていないので、売れている部数は微々たる物なんだと思います。
広告収入で食べさせていただいているようです。
最近、イメージ広告が増えてきて広告に対する思い入れが出てきたような気がします。

投稿: 香夜 | 2007.12.06 21:57

香夜さん、コメントありがとうございます。
広告も今はなかなか大変なんじゃないですか?
広告収入でやっていけてるなら立派だと思います。

雑誌の広告といえば、以前はタバコの広告って多かったですよね。週刊誌とかに見開きで、海外の風景写真とか使って「マイルドセブン」とか「キャスター」とか。今は全然ないですもんね。あれって、雑誌業界にとっては痛いでしょうね。

投稿: まろ | 2007.12.06 22:58

2万部あれば某チェーン店でも各店で平積みができるな~なんて、懐かしい(笑)
ちなみにあの回で、M御茶ノ水店店長が立ち読み客でエキストラ出演してたんですよ(爆)

投稿: キングT | 2007.12.11 10:03

キングTさん、コメントありがとう。
はい、懐かしいですね。
ドラマでは文教堂書店が映ってましたね。渋谷店?

投稿: まろ | 2007.12.11 11:13

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