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2008.01.23

あの日の『ダイヤモンド・ヘッド』

長男が小学校2年生の終わりに不登校になり、3年生の後半から4年生の後半まで都内のフリースクールに通っていました。
その頃、僕は会社勤めだったので、落ち着いた頃一日会社を休んでフリースクールを見学に行きました。

路地裏を抜けたその場所は、広い一部屋。いつ来てもいいし、いつ帰ってもいいし、何をやっててもいい。パソコンもゲームもコミックもあります。午前中はボランティアの大学生が、やりたい子だけ集めて勉強を教えます。
僕は、週刊プロレスを読んでいた中学生とプロレス談義で盛り上がり(「垂直落下式ブレーンバスターと垂直落下式DDTはどこが違うのか?」)、その辺でギターの練習をしている中学生と一緒にギターを弾き、女の子達が中心となって作ったお昼ご飯を一緒に食べました。長男は部屋の隅っこで、一人でマンガを読んでいました。

午後になって、一人の男の子がやってきました。彼はまっすぐに自分のエピフォン・カジノ(エレキギターです)を取りに行き、アンプにつないで、壁にもたれて弾き始めました。
ベンチャーズの『ダイヤモンド・ヘッド』。
完ぺきな演奏でした。何度も何度も、何度も何度も、『ダイヤモンド・ヘッド』だけを繰り返して弾きました。部屋にいるみんなもすっかりメロディを覚えていて、一緒に口ずさんでいる子もいました。

彼がフッと一呼吸入れた時に話しかけました。
「君、すげーうまいね。いつからギター弾いてるの?」
「……一年前、くらいっすかね……」
「一年でこんだけ弾けるなんてすごいよ。オレ、30年ギター弾いてるけど、かなわないよ」
「……そうっすか……」
彼ははにかんで笑いました。

たぶん14歳くらい。あれだけ弾けるということは、きっと学校へも行かず、食べることも寝ることも忘れて2分3秒の『ダイヤモンド・ヘッド』に集中した一年間だったのだと思います。ちなみに、他の曲はまったく弾けないそうです。
彼の『ダイヤモンド・ヘッド』は、学校に通っていたらきっと手に入れられなかった曲です。彼のその一年間は、誰にも笑い飛ばすことはできない、とても輝いた時間だと思いました。

6年生になった長男は、嬉しいことに毎日ギターに触ってポルノ・グラフィティの練習をしています。昨日は、僕が弾いて見せていたら弦が切れたので、ギターの掃除と、弦の張り方、チューニングを教えてやりました。
ふと思い出して「お前、フリースクールにいってた頃、中学生のお兄さんがいつも弾いてた曲、覚えてる?」と聞いてみました。「ダンダンダン♪ってのだよね。ポルノ・グラフィティの曲の間奏に同じようなメロディが出てきて、アレって思った」。やっぱり覚えていました。
「あれはな、ベンチャーズっていうバンドの曲なんだよ。父さんCD持ってるけど、貸してやろうか?」「ウソ。貸して」

長男の中で、フリースクールに通っていた時間はどんな思い出になっているんでしょうか? とりあえず、嫌な思い出ではなさそうです。
もしかしてベンチャーズも練習するのかな? 『ダイヤモンド・ヘッド』を弾いてみるのかな?
やってみろよ。学校だけがすべてじゃないって、もう知ってるはずだろ?

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コメント

まろさん、私読んでいて涙が出て来ました。

まろさんは本当に良いお父さんですね。

私は友達がいなかったら学校なんか行ってなかったです。
小学1~2年のときは毎朝腹痛で何度も通学途中から帰宅してました。
それでも祖母に手を引かれて行ってました。

中学では今でも親友であるビートルズファンの友人達がいたから行けてたました。

高校からは腹痛と吐き気と胃痛、下痢と戦いながら通学しました。

大学はまあ、それなりに何となく行けたけど
それでもいつも胃痛と腹痛下痢はありました。

今みたいにフリー・スクールに行かせて貰っていたら、きっと読書と音楽三昧だったでしょう。

私の親の年代の人は「学校に行きたくない???なんじゃそりゃ??なに贅沢いっとるか!!行かせて貰うだけで有難く思え!!」で終わりでしたから。

だから今、私は引きこもりだったり
親から問題だって思われてる子達の味方になって、日々、母親達の相談相手になっています。
徹底的に私は子どもの味方になります。

学校なんて、行けたら、行けば~~~
くらいのもんですよ。

投稿: 小径 | 2008.01.23 20:19

いい話ですね。
フリースクールの彼が選んだ曲が、なぜ、ベンチャーズの「ダイヤモンド・ヘッド」なのかが、とても気になります。普通、14歳の少年はあまり聞かないでしょ?
今どきの子供は、やっぱりポルノ・グラフティとか、コブクロとか、バンプ・オブ・チキンなんじゃないのかな、オヤジにはよくわからないけど…。

投稿: ハル | 2008.01.23 22:22

小径さん、でもね、学校には学校のいいところがあって、学校じゃないと得られないものもあると思っています。
だから長男にはずっと「いつか、行きたくなったときには学校へ行ってほしい。いいことも必ずあるから」と言い続けました。

しかし、小学校低学年を受け入れてくれるフリースクールって、ほとんどないんです。半年近く、あちこち探しました。
幸い、いいところが見つかったのでよかったです。遠かったんですけどね。彼は一人で電車を乗り継いで通いました。たいしたもんです。

投稿: まろ | 2008.01.23 22:56

ハルくん、そうですよねー。僕も「なんで?」と思いました。
でも、特別な理由はなくて、たまたまあの曲に出会ったときに「これをギターで弾きたい!」と思ったんでしょうね。

でも、いま聴いても、けっこういいですよ、ベンチャーズ。

投稿: まろ | 2008.01.23 22:59

自分から選び取った環境から得られるものは多いと思います。
私も高校2年で学校へ行けなくなって、始めたバイトで知り合った友人は、四半世紀過ぎても、まだ大切な友人です。
恐らく、学校へ行けなかった事で得られなかった物も数多くあります。
でも、得られなかった物を数えるより、得られたものを大切にしたいですね。

投稿: haco | 2008.01.24 08:15

> 得られなかった物を数えるより、得られたものを大切にしたいですね。
そう思います。何を手に入れたのかが大事ですね。
子どもを持って思う親の未熟さ。僕もまだまだ足りないものを手に入れたいです。

投稿: まろ | 2008.01.24 22:54

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